還元率はもともと、単価に含まれる給与の割合を示すために使用していました。目的は、単価の内訳を公開することにより、社会に正しい理解が広まることを期待したからです。しかし、新SES企業により、還元率に給与以外の経費も含まれるようになりました。これにより、還元率は公平で明確な評価基準から、誤解を招く指標へと変わってしまいました。その還元率の水増しの歴史について簡単に解説します。

■ 第1世代(2016年以前)

<aside> <img src="/icons/book_lightgray.svg" alt="/icons/book_lightgray.svg" width="40px" /> 「還元率=給与」の時代

この時代の還元率は非常にシンプルでした。企業がクライアントから得る単価のうち、エンジニアに支払われる給与の割合をそのまま還元率としていました。

例えば、還元率が70%の場合、単価が100万円ならエンジニアの給与は70万円です。

<aside> <img src="/icons/checkmark-square_lightgray.svg" alt="/icons/checkmark-square_lightgray.svg" width="40px" /> Q:なぜ、第一世代はマージン率ではなく還元率を使用したのですか?

A:第一世代のSES企業がマージン率ではなく還元率を使用した理由は、マージン率に関する誤解を避けるためです。派遣のマージン率を「会社の儲け」と理解している方もいらっしゃいます。マージン率は会社の利益だけでなく、社会保険料の会社負担なども含まれており、これを公開すると誤解を招く可能性がありました。そのため、第一世代は、マージン率の補完として還元率(給与の割合)や社会保険料の会社負担などを公開し、より正確な理解を促すために還元率を使用していました。

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■ 第2世代(2016年~2020年ごろ)

<aside> <img src="/icons/book_lightgray.svg" alt="/icons/book_lightgray.svg" width="40px" /> 「還元率=給与+社会保険料の会社負担」の時代

2016年ごろから、還元率に社会保険料の会社負担を含めるSES企業が現れ始めます。

第2世代の誕生です。

彼らは自らを「新SES」と称しています。

「エンジニアに多くの給与を支払いたくないが、たくさん採用したい。そのためには他社より多く給料を出しているように見せる必要があるため、企業が社会保険料10%を加えて還元率70%とうたい始めた。」引用:『還元率水増しの歴史』 **** つまり、第2世代の還元率70%には、社会保険料の会社負担である10%が含まれています。

そのため、単価100万円に対して給与は60万円となります。

この見せかけの還元率は、IT派遣の平均の還元率61.4%より低い水準です。

それにも関わらず、彼らは「業界最高水準」の還元率と大々的に宣伝し、 多くのエンジニアがこの言葉を信じて転職しました。

結果、第2世代は急成長します。

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■ 第3世代(2021年ごろから)

<aside> <img src="/icons/book_lightgray.svg" alt="/icons/book_lightgray.svg" width="40px" /> 「還元率=給与+社会保険料の会社負担+その他経費」の時代

第2世代の急成長を見て、多くのSES企業が誕生しました。

その中には、還元率をさらに高く見せるために「その他経費」を含める企業も出てきました。

その他経費には以下が含まれます:

例えば、還元率70%と宣伝する企業が、その他経費を5%含めている場合、実際の還元率は55%となります。

つまり、単価が100万円なら給与は55万円です。

ただ、第3世代の多くは、給与を第2世代と同じ60万円に保ちながら、見かけの還元率を70%から75%に増やす手法を用いました。

理由は、第1世代や第2世代よりも高い還元率をアピールすることで、多くの応募者を採用するためです。

結果、「高還元」という言葉がSES業界全体で広まり、求人票には「高還元SES」や「還元率〇〇%」といった表現が頻繁に登場するようになりました。

この状況に焦ったのが第2世代です。

これまで自社に都合良く利用していた還元率が、第3世代によるさらなる水増しにより、自社の還元率が相対的に低く見える状況が生じました。

これにより、還元率が自社にとって都合悪く使われるようになったのです。

第2世代は、この流れを止めるためにSNSを活用し第3世代を批判し始めます。

<aside> <img src="/icons/checkmark-square_lightgray.svg" alt="/icons/checkmark-square_lightgray.svg" width="40px" /> その発言を要約すると次の通りです。

しかし、一つの企業が還元率を水増しすると、他の企業もそれに対抗するため、還元率の水増しはSES業界全体に広がり、この流れは止められなくなりました。

結果、「還元率=給与」と理解していたエンジニアの中には、「入社後に期待を裏切られた」と感じる者が多く現れ、SES業界への不信感が一層高まることになります。

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※還元率の歴史については、こちらの動画でも解説しています。

還元率の歴史 (1).mp4